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04971号室
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第361話

「残念だったな。お前たちの仲間がどうなるか、見届けるがいい。
 ここからじゃ助けることはもちろん、声すら届けることもできないからな。」
 マジューイが言った。北島は、
「どうしよう。みんなが溺れて死んじゃうところなんか見たくナイヨー。」
「諦めるな。何か方法がないか、考えるんだ。」
 ブラックが言った。マジューイは、
「まあ、無駄だと思うが、その小さな頭で考えてみるんだな。」


 こちらは、ウェイトたちの宇宙船の中、
「いったいどうすれば……。」
 川田が言った。ウェイトは、
「いや、押し戻すんだ。」
「そんなー。無理ですよー。」
「何か武器で攻撃するんだ。」
「チンコだけでもこれだけでかいのに、たぶん効きませんよ。」
「今はこれしか方法がない。うわあっ!」
 巨人のチンコが更に奥に入り、川田とウェイトを壁に押さえつけた。


 この絶体絶命のピンチに、もはや打つ手はないように思われたが、
実は難をのがれた人物が二人いた。ダイちゃんと大ちゃんの二人だった。
実はこの二人、フーゲム星にウェイトたちの宇宙船が向かうことになったとき、
念の為にとフーゲム星の様子を見てくるように言われ、大ちゃんのテレポート
 能力で先に来ていたのだ。
「本当に何にもない星だなー。もう帰ろう」
 大ちゃんが言った。
「そうもいかないよ。この星に何かいないかちゃんと確認するようにと
 いわれただろう。」
「んもう。そんな面倒なことをしなくても、僕が巨大化して戦えばすぐに
 やっつけられのに。」
「石本のお兄ちゃんも知らない間に敵に操られているみたいだったし、
 僕たちも油断していると……。」
「大丈夫だって……あれ?誰かいる。」
「ダイちゃん、人の話はちゃんと聞いてよ。」
「本当に誰かいるんだ。ほら。」
「あ、ほんとだ。」
 二人はあの巨人親子を見つけたのだった。しかし……。
「そうだ。ちょっとあの二人を脅かしてやろう。」
 ダイちゃんはそう言って巨大化のポーズを取った。 

第362話

ダイちゃんは巨人の親子の10倍ほどのサイズに巨大化して、後ろからこっそり近付いた。
巨人の親子は気付かずそのまま小便の体勢になっていた。
そしてその巨大なチンコから小便が発射された直後だった。

「うまそうなこびとだな! 食ってやる〜」

ダイちゃんが親子の上から言ったのだ。

ジョボボ・・

親子は少し小便を出したが驚いてすぐに止まった。
そして声がした方を恐る恐る見上げた。
「ぎゃああーーーー。 きょ・・巨人だーー!!」
「うわーーーー!! ブタの怪獣だ−ーー!!」
巨人の親子は恐ろしさのあまり腰を抜かしてそのまま座り込んでしまった。
ダイちゃんが、
「おいっ! 誰がブタの怪獣だよ!! 失礼なやつだ。」
そこに大ちゃんが親子と同じサイズに巨大化して走ってきた。
そして親子に頭を下げて説明した。
「すいません。 この巨人は僕の友達で、ちょっとイタズラしただけなんです。
 だから安心して下さい。 ほんとにごめんなさい。」
するとダイちゃんはゲラゲラ笑いながら大ちゃんと同じサイズまで縮んだ。
大ちゃんがダイちゃんに言った。
「もう、やりすぎだよ。 ダイちゃんもあやまってよ。」
「なんだよ。別にほんとに食べるつもりじゃないんだからいいだろ。」
巨人のお父さんがようやく落ち着いて話せるようになった。
「あ・・・あの、イタズラ・・・だったのか。 ほんとに食われるかと思った・・・」
サムも、
「よ・・・よかった・・・。 びっくりしておしっこ止まっちゃったよ・・・。」
大ちゃんがそれを聞いて言った。
「あ・・おしっこの途中だったんですか。」
「ああ、携帯トイレを2つ見つけたんでね。 2人で試しにやろうとしていたんだよ。」
「そうでしたか・・。 驚かせてごめんなさい。 続きをしてください。」
「ああ、そうさせてもらうよ。」
親子はそう言うと再び小便をする体勢になった。
すると、ダイちゃんがクスクスと笑い出した。
それを見た大ちゃんが、
「もう!ダイちゃんなに笑ってるのっ! ダイちゃんのせいで僕があやまらなきゃ
 ダメになったじゃないか。」
 だがダイちゃんは笑いながら親子の方を指差して言った。
「そんなことよりあれをよく見ろよ。」
「え? なにを?」
「あの携帯トイレとか言ってたやつだよ。」
「それがどうかしたの?」
「気付かないのか? あれ、僕達が乗ってた宇宙船だよ。・・・クスクス」
「ええーーーー!! なんでそれを早く言わないの!!? って言うか、
 なんで知ってて止めないの!!」
「だって宇宙船をトイレと間違えるなんて、おもしろすぎるじゃん・・・ぎゃははは。」
大ちゃんはあわてて親子の前に駆け寄って言った。
「すいません! おしっこするの待ってください!!」
巨人のお父さんが「またか」と言うような顔で言った。
「今度は何だね。 イタズラも2回めはゆるさんぞ。」
「違うんです。 その持ってるもの、トイレじゃないんです。 宇宙船なんです。
 中に人が乗ってるんです!!」
すると巨人のお父さんが驚いて宇宙船を股間から離した。
「なんだって!? この小さいのが宇宙船だって?」
「そうなんです。 中には僕の仲間が乗ってるんです。」
「そ・・・そうだったのか、トイレとは何となく違うような気がしたんだが・・・
 まさか宇宙船だったとは。 ちょっと出してしまったが、まあ大丈夫だろう。」
お父さんはゆっくり宇宙船を地面におろした。
だがその横で・・・
「はふ〜〜」
サムが大ちゃんの話を聞かずに気持ちよさそうな表情をしていた。
「お・・おい、サムまさかおしっこしちゃったのか。」
「ふ〜。 うん、すっきりしたよ。 我慢してたからいっぱい出たよ。
 ん? 何かあったの?」
大ちゃんは大慌てでサムから宇宙船を取り戻した。 

第363話

「おーい、大丈夫ですかぁー。けがはないですかぁー。」
 大ちゃんは手にしたナントの宇宙船に向かって呼びかけた。それを
見ていたサムは、
「あれ、君何してるの?それトイレだよ。中に誰もいないよ。それとも
 新しい遊び?」
「ちょっと来なさい。」
 父親はサムの手を引いてウェイトたちの宇宙船の前に連れてきた。
「あれ、これお父さんのトイレだね。」
 父親は、
「サム、お前が小さな時に小さな宇宙人の話をしたことがあっただろう。」
「でもお父さん、あれはあとで作り話だって言ったじゃない。」
「確かにあの話は本当じゃない。でも小さな宇宙人はいるんだ。」
「お父さん、どうしたの急に。」
「私もそのことは今の今まで信じていなかった。でもさっきの巨人を見たろう。
 巨人がいるならこびとがいたっておかしくない。」
「まさかあ、さっきはすごくびっくりしたけどきっと何かのトリックじゃない?」
「信じないならもう一度目の前で見せてやろうか。」
 ダイちゃんはそう言って巨大化のポーズを取ろうとした。
「ちょっとダイちゃんやめてよー。」
 大ちゃんはナントの宇宙船を地面に置き、ダイちゃんの元へ駆け寄った。
その直後、その宇宙船に近づく影があったことに気づくものはいなかった。


 こちらはウェイトたちの宇宙船の中、ウェイトが、
「やれやれ、一時はどうなるかと思ったが最悪の事態は避けられたようだ。」
「これからどうするんです?」
 川田が言った。ウェイトは、
「さっきのショックで外部モニターがほとんど全滅してしまった。
 様子を見るために外へ出よう。」
「まずいですよ。さっきの巨人がまだいるかもしれないんですよ。」
 そう言いながらも川田は、ウェイトと一緒にハッチから外へ出た。


 宇宙船の外ではもちろん例の親子とダイちゃんと大ちゃんがいた。
「信じられない。本当に小さいや。」
 サムが外に出てきたウェイトと川田を見て言った。


 時間を少し戻そう。ここはナントの宇宙船の中、サムのチンコの先が
ハッチから侵入してきた。ナントの宇宙船の中でも、思わぬ事態にパニックに
なっていた。
「何がどうなってるんだ。」
 ナントが言った。ブラウンが、
「この船が巨人に捕まったらしい。しかも悪い事にこの船をトイレと
 間違えているようだ。」
「なんとかならないのか。」
 ナントが再び言った。グリーンは、
「この宇宙船には避難用ブロックがあるはずだ。気密性が高いし、かなりの圧力に
 も耐えられる。そこなら巨人の小便の水圧にも耐えられるだろう。」
 ナントは、
「仕方がない。」

-ゴゴゴゴゴ……-

 その直後、サムの大量の小便が船内に流れ込んできた。それでも
なんとか間一髪でナントたちは避難用ブロックに逃げ込むことができた。

-ピーッピーッ-

 ナントたちが避難用ブロックに逃げ込むと、緊急無線の呼びだし音が鳴っていた。
緊急無線のモニターには、マジューイと、彼に捕まった部長たちが映し出されていた。
『私はマジューイ。君たちのおかげでおもしろいものを見せてもらった。
 でもこのままでは気の毒だから別の場所に移動してあげよう。そうだ、ムロトン星
 あたりがいいだろう。心配しなくていい。彼らにちゃんとメッセージを
 伝えさせるから。』
 その直後、どこかに転送されたのが、部長たちの姿は消えた。


 こちら巨人親子。
「わかったろう。サム、広い宇宙にはいろんな宇宙人がいるんだ。どうした。
 サム。」
 サムは答えなかった。というか答えられなかった。突然口の中に何かが
あるのを感じ、舌で探っていた。


「うわっ、なんだここー。」
 北島が言った。部長たちの転送先はサムの口の中だったのだ。 

第364話

サムが口をモゴモゴさせながら言った。
「う〜ん・・・、なんか口に虫か何か入ったみたい・・・モゴゴ。」
するとお父さんは、
「虫なんか飛んでなかったが・・・。 とにかく出しなさい。」
サムは言われた通り、自分の掌にペッと吐き出した。
すると小さなこびとが3人、サムの唾液にまみれて出てきた。
「うわ、こびとが口に入ってたんだ。」
それを見たダイちゃんが、
「ふ〜ん、こびとをいきなり食おうとするなんて僕と気が合いそうだな。」
「ち、ちがうよー。食べようとしたんじゃないよ。勝手に口にはいったんだ。」
そこに大ちゃんが近付いてきて、サムの手に乗っているこびとを見た。
「あっ、北島のお兄ちゃん達だ! マジューイって人を追い掛けて行ったはずなのに、
 なんでこんなところに?」
すると部長が、覗き込む巨大な大ちゃんの顔を見上げて言った。
「大ちゃんなのか? よかった。 あの後俺達はマジューイに捕まってしまったんだ。
 石本のやつも転送されて操られてるんだ。 そして俺達はもどって来れたが、
 今度はナントさん達がムロトン星ってとこに飛ばされたらしい。」
「え? ナントさん達が? そういえばナントさんの宇宙船、誰もいない感じだった。」
「みんなにそう伝えてくれ。」
「うん、わかった。」
そう言うと、大ちゃんはウェイト達の宇宙船の方に行き部長に聞いたことを伝えた。
その間、サムは自分の掌に乗ったこびとをじーっと見つめていた。
そして大ちゃんが再びもどってきたとき、とんでもないことを言い出した。
「ねえ、これ僕にちょうだい?」
「え?」
サムはお父さんのほうにも言った。
「お父さん、これ飼いたい。 ねえいいでしょ? ちゃんと世話するからー。」
「な・・何言ってるんだ。 この人達は小さいけど、サムと同じ人間なんだぞ。
 動物や虫じゃないんだ、飼えるわけないだろ。」
「いやだよ、飼いたいよ。 大事にするから。」
サムはだだをこねはじめた。
そして困ったお父さんまでとんでもないことを大ちゃんに言った。
「あのー、君。 このこびと、1匹でいいからゆずってくれないか?」
「そうだよ、いっぱいいるんだから1匹ぐらいいいでしょ。」
大ちゃんは、
「そ・・・そんなこと言われても・・・・。」 

第365話

「お願い、大事にするカラー。」
 サムは大ちゃんに言った。大ちゃんは困った顔をした。するとサムの
手のひらの上で北島が自分についた唾液を手で拭きながら、
「そうだ。俺、この子のペットになる。だってほっとけないよ。」
 部長がおなじくサムの手のひらの上、
「おい北島、なんて事言うんだ。ムロトン星へ飛ばされたナントさんたちが
 どうなってもいいのか?みんなここまで頑張って来たというのにまさか自分だけ
 巨人の子供の……。」
 すると父親が、
「私たちはそのムロトン星から来たんだ。そうだ、誰かサムのペットに
 なってくれるというのなら君たちの仲間を連れていってあげるというのは
 どうだろう。」
「そんなこと言われても、僕一人じゃ決められないよ。」
 大ちゃんがそう言うと、
「おじさん、ほんとうにムロトン星から来たの?こびとが欲しいからって
 うそついてるんじゃないの?」
 ダイちゃんが意地悪そうに父親に言った。サムの手のひらの上で今度は
ブラックが、
「彼の言っていることは本当だろう。ムロトン星はここから少し離れた、
 巨人たちのすむ星だ。」
 部長が、
「なら早く行かないとナントさんたちが巨人に捕まってしまうかもしれない。」


「いったいここはどこなんだ?」
 ナントが言った。ナントたちはいきなり見渡す限り巨大な植物の生えた場所に
転送されていたのだ。グリーンが、
「おそらく、マジューイが言っていたムロトン星だろう。更に悪いこと私たちは
 宇宙船ごと縮小され、今度は宇宙船も無しにここへ転送された。この星の住民に
 助けを求めるのも1つの案だろうが、状況から考えるとこの星の住民たちは
 今の私たちに比べると巨人のはずだ。」
「ではこれからどうする?。」
 ブラウンが言った。そのとき、

-ズシーン、ズシーン-

 三人の所へ巨大な足音が震動と共に近づいて来た。 

第366話

そしてその巨人は3人の前で立ち止まると、振り返って叫んだ。
「立ちションして行くからちょっと待ってて−。」
そう言うとズボンのチャックをおろしてチンコを引っぱり出した。
足元のナント達は、
「お・・おい。けっきょく小便かけられるのか?」
逃げようとしたが、近くに隠れられそうな場所がない。
しかも下手に動くと見つかりやすくなるため、動くこともできなかった。
「ん?」
だが巨人は足元の3人をあっさり見つけてしまった。
「なんだこの虫。 こいつらにかけちゃおう。」
ナントは、
「み・・見つかったぞ! 逃げるぞ!」
そう言った時にはもう遅かった。
巨大な滝のような小便が、遥か上空から3人に降り注いだ。

ジョボボボ・・・・

「ぎゃーーーー。」
ものすごい水圧で3人は地面にめり込むほどだった。
地面が土だったため助かったが、しばらくは動けなかった。
「ふいー。 すっきりした。 ん? 何か変だな、この虫。」
巨人はしゃがんで自分の小便で濡れている地面をよく見た。
「これは・・・虫じゃない。 人・・・? こびとだ!!」
巨人は立ち上がると再び振り返って叫んだ。
「おーい、こっち来てみろよ−。 すごいもの発見したぞ!!」
すると遠くの方から、
「なんだよー。」
「お前の小便の後なんか見たくないぞ−。」
など言いながら、2人の巨人が近付いてきた。

ズシーン ズシーン ズシーン ズシーン・・・

そしてナント達を取り囲むように、巨人2人が立ち止まった。
そして小便した巨人が言った。
「これよく見てみろよ。 何だと思う?」
2人の巨人はしゃがんで、ピクピク動くナント達を観察した。
「これ・・・、こびとじゃない? すげぇ・・・」
「ほんとだ、小さいけど人間の姿してる。」
すると小便した巨人が、
「ちょうど3匹いるしさー、1匹ずつわけて飼おうよ。 こびと飼ってるなん
 てすごいだろ。」
「うん、俺も飼いたい。」
「そう言えばサムのやつキャンプ行ってるだろ? 帰ってきたら自慢してやろうぜ。」

第367話

「でも小便まみれだろう。なんで小便するまで気がつかなったんだよ。」
「がまんできなかったんだよ。」
「そうだ。俺はこびとを洗う水とそれをここまで持ってくるための容器を
 もってくる。お前はこびとを入れるかごか何かを探してこい。お前は
 こびとの見張りだ。」
「なんでお前が仕切るんだよ。」
「でもぐすぐずしてるとこびとが逃げちゃう。」
「しょうがない、言われたとおり、こびとを見張っておくよ。」
「逃がしたり、一人で持って帰るのはなしだぞ。」
「わかってるよ。」
 巨人たちは、一人を残して道具を探しにいった。そのこびとたち、すなわち
ナントとグリーン、ブラウンの三人は、先ほどの巨人の小便のダメージから
まだ回復していなかった。一人残された巨人はしゃがんでナントたちを見て、
「なんだ、まだちゃんと動けないみたいだな。別に見張っていなくても
 逃げていかないだろ。」
 残された巨人は先ほどナントたちに小便をかけたのと別の巨人だった。
ちなみに小便をかけた巨人の名はシムという。この見張るように言われた
巨人はガル、最後の一人はマントという。
「シムの奴、小便なんかするから俺もやりたくなっちゃったじゃないか。
 あいつみたいにこびとにかけないようにと……。」
 ガルはそう言ってその場を離れた。

「おい、動けるか。」
 ナントはそう言ってふらふらしながらも立ちあがった。
「しかし、遠くまで逃げていけそうにない。すぐに見つかってしまう。」
 グリーンが言った。
「いや、逃げようと思わなければ、なんとかなるかもしれない。」
 ブラウンが言うとナントは、
「どういうことだよ。お前の言っていることは意味不明だ。」

 ガルが近くで小便をすませ、こびとたちのいた場所へ戻って来た。ガルは、
「漏れるかと思った。あ……。」
 先ほどまでいたこびとたちが見えなくなっていた。
「あ、あいつらどこへ逃げたんだ。遠くまで行けるとは思えないけど……。」
 ガルはあたりを見回した。しかしこびとの姿は見えない。そのとき、

-ビュゥゥゥッ-

 突然突風のような強い風が吹き、落ち葉が舞い上がった。
「うわっ、なんだ……。あっ!」
 先ほどまで見えなかったこびとが自分の足元にいた。
「そうか、お前ら落ち葉の下に隠れていたんだな。逃げたと思わせようと
 したのか。」
 ガルはこびとたちを見つめていたがしばらくして、
「そうだ。もう逃げようなんて思わないようにお仕置きしてやる。」 

「おい、みんなばらばらににげろ!」
 ナントが言った。グリーンが、
「だめだ。まだ動けない。お前たちだけでも……。うわあっ!」
 そう言っているうち、三人とも次々と巨人ガルに捕らえられた。 

第368話

三人は掌に乗せられ、顔の前まで持ち上げられた。
「うわ、まだシムの小便でびちょびちょだ。触らなかったらよかった…。
 まぁ、あとで手を洗えばいいか。」
ガルは独り言を言いながら三人を観察している。
「そういえば、こいつら言葉は通じるのかな? 意志の疎通ってやつができた方が、
 いろいろ楽しめそうだしなぁ。」
それを聞いた三人は小さな声で、
「今のところは言葉が通じないフリをした方がよさそうだ。」
「わかった。」
するとガルが、
「おい、どうなんだ?」
と、ナントをつついた。
「痛い」
「おっ、痛いって言ったぞ。」 

第369話

 ガルは今度はグリーンを摘み上げた。そして、
「さて、今度はどうしてやろうか。何か言えば勘弁してやる。どうなんだ。」
「「おい、なにやってるんだ!!」」
 ガルに話しかけたのは、グリーンではなく道具を探しに行って戻って来た
シムとマントの二人だった。シムは、
「まさか一人でこびとたちを持って逃げるつもりだったんじゃないだろうな。」
「そんな事出来る訳ないだろ。お前の小便がかかってるんだぞ。」
 ガルが言った。するとマントが、
「つーか、今お前そのこびと持ってんじゃん。」
「あ……。いや、それよりすごい発見したんだ。こいつら言葉が通じる
 みたいなんだ。」
「そりゃすごい。なにか話し掛けて見ようよ。」
 シムが言うとマントが、
「まさかこびとを持って逃げようとしたのがみつかったんで、こんなうそをついて
 ごまかそうとしてるんじゃないか?」
「そんなんじゃないよ。」
 ガルが言うとシムが、
「そうだ。面白いことを考えたぞ。」
「その前にこびとたちを洗えよ。話しはそれからだ。」
 マントが言うとシムが拾った紙コップの中に入れた水を差し出した。
するとガルは自分の捕まえたこびとたち、すなわちナントたちをその中へ
次々と放り込んだ。いきなり水の中に投げ込まれたのでナントたちは、
「うわっ!」
「つめたいっ!」
「何するんだ!」
 三人はしまったと思った後恐る恐る上を見上げた。上からはにやっと笑った
三人の巨人たちが覗きこんでいた。 

第370話

ガルが言った。
「な、今しゃべっただろ?」
他の2人の巨人も、
「おおー、つめたいって言ったぞ。」
「話せるペットなんてすごいよなー。」
そして紙コップを横にゆすって水をかき混ぜた。
「そろそろきれいになったかな〜?」
シムはコップの中の3人を指で摘み上げて自分の手に乗せた。
すると水だけになった紙コップをガルが自分の手を洗うのに使った。
「これだけじゃ、ちゃんと手洗えないな。 家に帰ってちゃんと洗おう。」
「じゃあそろそろ帰るか。 もう遅いしな。」
「うん、ってことでこびとを分けよう。」
巨人達はシムの掌からこびとを1匹ずつ摘み上げ、自分の手に乗せた。
「じゃ、これでみんなにいきわたったな。 帰ってさっそく世話しなきゃ。」
そして3人の巨人は手にこびとを持ってそれぞれの自宅に帰っていった。 

第371話

「今日から学校だぞ。がんばっていって来い。」
 ここムロトン星でも冬休みが終り、子供たちは今日から学校へ行くことになる。
父親と無人星にキャンプへ行っていたサムも今日から学校へ行くのだ。ところで
三人の巨人たちにそれぞれ「飼われる」ことになったナントたちはもちろんだが、
ウェイトたちや部長たちはどうなったのだろうか。
「ううん。これでよかったのかなぁ……。」
 ここはウェイトたちの乗ってきた宇宙船の中、そう言ったのは北島だった。
一旦巨人サイズになっていたメンバーはもちろん、巨大化できるダイちゃんや
大ちゃんもその中にいた。サンドは、
「とりあえず、ナントたちが見つかるまでの保護はしてもらえることに
 なっているし、今のところは問題はないと思うわ。」

-ズン、ズン、ズシーン-

 そのとき、宇宙船内に音と震動が響き、段々大きくなる。部屋の中にサムが
入って来た。ウェイトたちの乗ってきた宇宙船はサムの部屋の中にあった。
「ねえ。誰が僕のところに残ってくれるのか決まった?」
 部屋に入ったサムは宇宙船に向かって話しかけた。宇宙船からウェイトが
出てきた。ウェイトは、
「残念だが、まだ決まっていない。それにまだ探すべき仲間も見つかって
 いないんだ。」
「それじゃ、仲間が見つかるまで、みんないてくれるんだね。行ってきマース。」
 そう行って、サムは学校へ持っていくかばんを持ち、うれしそうに部屋を出た。
ウエイトに続いて、北島が宇宙船の外へ出てきた。
「あの、サンドさんが呼んでますけど。」
「わかった。」
 そのときである。突然サムの部屋に虫が飛び込んできた。虫といっても
巨人の世界の虫である。ウェイトや北島から見れば数メートルもの巨大な
ものである。
「うわあっ、たすけてくれえっ!!」
 虫は北島を捕まえ、外へと飛び出した。


「すごいよなー。俺たち。」
「こびとを飼ってるなんてサムに自慢できるな。」
「待て、それは三人の秘密にしておこう。」
 シム、ガル、マントの三人はちょうどサムの家の前を通りかかったときだった。
「わっ虫だ!」
「なんだこいつ。」
「つかまえたぞ。おいよく見ろ……。」
「おいシム、虫なんか……あっ!!」
 シムの捕まえた虫、それこそ先ほど北島を捕まえて外に飛び出した虫だったのだ。 

第372話

ガルが言った。
「またこびとだ!」
シムが、
「虫がこびとを餌にしようとしたのかな。」
するとマントがサムの家の窓を指差して言った。
「この虫、サムの家から出てきたぞ。 見てたから間違いないよ。」
「それって・・、サムもこびとを隠しもってるってことか?」
「さぁ。 それはわからないけど・・」
「確かめてみようぜ。」
「え? どうやって。」
「サムはもう学校に出かけただろ? 親父さんもさっき仕事に出ていくのを見た。
 つまり今は家に誰もいないってことだ。」
「でも鍵がしまってると思うよ。」
「前にサムの家に遊びに来た時、鍵の隠し場所見たんだ。」
シムはそう言うと、サムの家の植木鉢を調べはじめた。
「ほらあった。」
シムは鍵を見つけて2人に見せた。
ガルは、
「こんなことしていいのかな・・・。 犯罪じゃない?」
「心配するな。 鍵を元通りにしておけばバレルことないって。 さあ行くぞ。」
シムはドアの鍵を開けて2人を呼んだ。
2人は周りを気にしてキョロキョロ見渡しながらサムの家に入った。
3人は階段をのぼり、サムの部屋に向かった。



そしてこちらはウェイト達の宇宙船。
北島が連れ去られて騒いでいたが、近付いてくる地響きのような足音に気付いて静まった。

ズズーン ズシーン ズーン ズズーン・・・

「サムくんがもどってきたのかな?」
「いや、足音の数が多いぞ。 とりあえず宇宙船の中で様子を見よう。」
ウェイト達は宇宙船の中に入っていった。
その直後、3人の巨人がドシドシと部屋に入ってきた。
そして、宇宙船を見つけると
「おい、これ何だと思う?」
「さぁ? 見たことないな。」
「これって最近テレビショッピングでやってる携帯トイレじゃない?」
「ちがうよ。 お前らにぶいなあ。 これはたぶん宇宙船だ。」
「ええ!? こんな小さいのに?」
「このこびと達が乗ってきたんだ、きっと。」
「ってことは、このこびとって宇宙人なの?」
「たぶんな。 俺の勘だとまだ中にこびとがいるんじゃないかな。」
「よし、調べてみよう。」 

第373話

「まずいな。」
 ウェイトがなんとか修理を終えたばかりのモニターで、外の様子を見ていた。
「それじゃ、僕が巨大化して、追い払ってやろうか?」
 ウェイトたちと同じサイズになって宇宙船の中にいた、ダイちゃんが言った。
ウェイトは、それはまずいと言おうとしたが、ここで下手に怒らせたりしたら
事態を更に悪化させると思い、やめた。そこへもちろん同じサイズになっていた
大ちゃんが、
「だめだよ。ダイちゃん、巨大化してせっかく置いてもらっているサムくんの
 家を壊すかもしれない。」
「それじゃ、どうすればいいんだよ。」
「ええっと……。」
 ダイちゃんは返答に困って黙ってしまった。するとサンドが、
「うーん、なんとか巨人たちを追い払えればいいんだけど……。」
 そのときである、宇宙船が大きく動き、中のみんなが倒れそうになった。
3人のうちの一人、ガルが宇宙船を持ち上げたのだ。
「おい、こっちにも有るぞ。」
 シムがもう1つの宇宙船を見つけた。実はウェイトたちの宇宙船の他に、
ナントたちの宇宙船もサムの部屋へ持ちこまれ、保管されていたのだ。
ガルはウェイトたちの宇宙船を置き、シムのほうへ向かった。そのとき、
再び宇宙船内では大きな揺れを感じた。
「やれやれだな。」
 ウェイトが言った。するとダイちゃんが、
「いったいあいつらどうするんだよ。」
「それに、あの巨人たち、どうしてこの部屋にはぃって来たのかしら?
 まるで私たちがここにいることに知っていたみたいだわ。」
 サンドがそう言ったとき、部屋の中にある音が鳴り響いた。

-ぴぴっぴー-

 部屋の中の時計の時報だった。3人は一斉に時計のほうを見た。
「おい、もうこんな時間だ。」
「大変だ、遅刻する!」
「そうだ、この宇宙船を持っていって、サムを問い詰めよう。」
「それじゃここに入ったことがばれるだろ。」
 慌てる3人、そこへシムが、
「とにかく出ろ、そのあとの話しは学校へ行きながらやろう。」
「それじゃ宇宙船はどうするんだよ。」
 マントが言った。
「宇宙船は置いていく。そのことは後でこいつにゆっくり聞けばいいさ。」
 シムの手の中には、先ほど虫が捕まえてきたこびと、北島がいた。 

第374話

ズシン ズズーン ズシーン ドドド・・・

3人の巨人は地響きのような足音をたてながら部屋から出ていった。
ウェイトは、
「ふ〜・・・、なんとか助かったな。」
巨人が出ていく様子をモニターで見ていた大ちゃんが言った。
「ねえ、あの巨人なにか手に持ってたよ。 小さい人形みたいな・・・」
ダイちゃんが、
「それってさー、さっき虫に連れていかれた北島とか言うやつじゃないの?」
サンドも、
「そうね・・・。 それなら私達がここにいるってわかってもおかしくないわね。」
ウェイトが、
「居場所はわかったがまずいな・・・。 あいつらはサム君と違って友好的とは思えん。
 助けるのはむずかしいな。」
するとダイちゃんが、
「むずかしいことないよ。 僕が行って取りかえしてくる。」
「でもあの巨人達の学校の場所知らないでしょ。 迷ったら大変だよ。」
「大丈夫だって。 外で巨大化して上から学校らしい建物を捜せばいいんだ。」
「ダメだよ。 そんな巨大化したら街を潰しちゃうよ。」
「なんだよ。 マジューイとか言うやつを早く捕まえに行かないとダメなんだろ?
 だったらこんなとこで待ってる場合じゃないだろ。」
「そ・・そうだけど。 街を潰したらサムくんかわいそうだよ。」
「じゃあさー、お前の力で空飛べるようにしてくれよ。 空中で巨大化すれば問題ないだろ?」
「うーん・・・、それでいいのかな・・・?」 

第375話

 一方、シム、ガル、マントの3人は鍵をかけて元の場所に戻し、学校へ向かった。
「ところで、こいつどうする?」
 マントがシムの手の中の北島を見ていう。
「いっしょに連れて行くのさ。」
 シムはそう言って北島を手に持ったまま、もう1つの手でかばんの中からビンを
取り出した。
「器用だな。」
 ガルが言う。マントは、
「そういうもんか?あっ!」
 シムが取り出したビンにはこびとが入っていたのだ。マントは、
「えっ!もしかして……。」
「ちゃんと呼吸できるようにふたに穴は開けてある。」
 シムが言うとガルは、
「そう言う問題じゃ……(-_-;)」
 シムはみんなの視線を気にせず、ビンのふたを開け、その中に北島を放りこんだ。
が、放りこまれた本人にとってはたまった物ではないついさっきまでシムの指に
つぶされそうになりながら指を必死で押し返そうとしていた北島は突然空中に
放りだされ、訳のわからないうちに、透明な容器の中に入れられていたのだ。
「いたたた……。ここはどこだ?」
 北島は回りを見まわすと、中に誰かがいるのに気がついた。
「君は……。君も捕まったのか?」
 北島は、
「その声は、ブラウンさん?」
「そうだ、じ……うわあっ!」
 突然容器が大きく揺れ、二人は内側の壁にたたきつけられた。3人は大急ぎで
学校に向かっていた。そう、シムをはじめ3人は学校に向かって全速力で
走っていた。シムが走ると彼のかばんは揺れ、その中に放りこまれたビンの中の
二人はその度に内側にたたきつけられた。
「おい、ちょっと。」
 マントが突然立ち止まった。
「なんだよ。遅刻するだろ。」
 ガルが言った。そのとき突然あたりが暗くなった。シムが、
「まずいな。急に曇ってきたのか。雨が降ってきたら大変だ。」
 空をふと見上げた3人は大変な物を見てしまった。空に浮かぶ巨人、それこそ
巨大化して空を飛ぶダイちゃんの姿だった。 

第376話

「へへへ〜、やっぱりヒーローは空を飛べないとなー。 これならすぐに見つけられるぞ。」
ダイちゃんは機嫌よさそうに独り言を言いながら空をゆっくり飛んでいる。
「えーと、学校はどこだ〜? うーん、もうちょっと巨大化した方が探しやすいかな。それっ!」

グイィィィィィン・・・  ズガーーーーン!!

「おっと、低すぎた。」
ダイちゃんは、高度を上げずにそのまま巨大化したため突き出た腹が地面に擦り付けられ
そこに建っていた住宅が潰された。
「まあ、これぐらいどおってことないよな。 さあ、学校さがそっと。」


それを下から見上げていたシム達は、
「な・・・・なんだよ・・・あれ・・・・」
「わ・・わからないよ。」
「巨大なブタの怪獣・・・・?」
「突然巨大化したよな・・・?」
「うん・・・。 街を破壊しにきたのかな・・・?」
「どうする?」
「とりあえず、安全な距離をとってあとをつけよう。」
「だ・・大丈夫かな・・・」
「こびとの次は巨大怪獣なんて・・・、どうなっちゃうんだろう。」 

第377話

「あ……それより学校は……。」
「そうだ、忘れてた。」
「こんな奴が出てくりャ、休みになるだろ。」
 誰と言うこと無しに3人は、影に隠れるように巨大飛行ダイちゃんの
後をつけ始めた。

 一方、こちらはその学校。サムはもちろん、クラスメートたちが
わいわい騒いでいた。
「おはようー。」
「そう言えばシムたち来てないナー。」
「始業式の日に遅刻かしら?」
 そこへクラスの担任の先生が教室に入って来た。
「みんな静かにしてください。今日の始業式は中止です。みんな家に
 帰ってください。また、ミスァキ地区方面の生徒は、親に連絡して迎えに
 来てもらってください。」
「先生、何かあったんですか?」
 生徒の一人が先生に尋ねた。
「よくはわからないが、何か巨大な飛行物体が現れたらしい。」
 すると生徒たちがまた騒ぎ出し、
「巨大な飛行物体って何?」
「何処かの国がひそかに開発していた秘密兵器で攻めてきたんだ。」
「空とぶ怪獣?」
「UFOかも。」
「そうだ、サムくん無人星へキャンプへ行ってたよね。悪い宇宙人に
 後をつけられてなかった?」
 サムは、
「なんだよ。ソンなことナイヨー。」
 そう言いつつも、心のどこかに、何か気になるものを感じた。
「静かにしなさい。幸い、謎の飛行物体は、学校から遠ざかっているみたいです。
 みんな気をつけて帰ってください。家に着いたら安全が確認されるまで、
 外に出ないようにしてください。」

「へんだなー。学校らしき建物が見つからないナー。」
 実はダイちゃん、サムの通う学校とは反対方向へ飛んでいたのだ。
もし学校を彼が見つけたとしても、サムが通う学校でないことは確かだ。
「ヒーローとしてはちょっとかっこ悪いけど、飛びつづけるのつかれるし、
 誰かにちょっと聞いてみよう。」
 ダイちゃんが下を見ると、ちょうど建物の中から、何人かの人が出てくる
ところだった。

「へっへっへ、大成功だ。」
「何だか知らないけど、外の騒ぎのおかげで、うまく逃げられた。」
 実はダイちゃんが見つけたのは、銀行強盗の一味だった。用意した車で
逃げようとすると、突然上のほうから大声、
「おーい、ちょっとこのあたりに学校有るか知らないかなー。」
「やばい、警察だ!」
「いや子供の声だ。」
「何だあれは〜、ブタの怪獣が空を飛んでルー。」 

第378話

「おいっ! ブタの怪獣って僕のことか? この星のやつらはみんな失礼なやつだな。」
ダイちゃんは飛んでる姿勢に疲れて、銀行強盗の一味の前に着地した。

ズガーーーーン・・・・

道幅よりも巨大な足で着地したため、周りの建物は踏みつぶされ
さらに着地した時の振動で崩れる建物も少なくなかった。
幸い銀行は頑丈な建物だったため崩れることはなく、
その前に立っていた銀行強盗達も助かった。
ダイちゃんはそのまましゃがんで、足元のこびと達に話し掛ける。
「早く言えよ。 聞いてるだろ! 学校はどこにあるんだ?」
銀行強盗達はあまりの恐怖に、ただ震えているしかできなかった。
するとダイちゃんは、巨大な手をこびとの前に出すと
1人を指で摘まみ上げた。
顔の前まで持ち上げて、
「なぁ、僕ってそんなにブタに似てるの? しかも怪獣はないんじゃない?
 僕はヒーローなんだぞ?」
摘まれたこびとは、恐怖でダイちゃんの言葉など聞く余裕もなく
下の仲間に助けをもとめ続けた。
「た・・・・た・・助けてくれー!! 巨大ブタに食われるーー!!」 

第379話

「すごいな。」
「これ、映画じゃないんだよな。」
「うん。」
 ダイちゃんの後をこっそりついて来ていたシムたちは、この様子をみいていた。

 一方、そのダイちゃんの足元では銀行強盗の仲間たちは突然の出来事に
パニック状態だった。必死で逃げ出す者、恐怖の余り失神する者、無謀にも
ダイちゃんに向かってピストルを発射する者もいた。当然そんな攻撃をうけても
ダイちゃんにとってはなんともない。
「あっ、ヒーローに向かっておまえらなんてことするんだ。そうだ、おまえら
 悪人だな!」
 普通に考えれば、根拠のない言いがかりなのだが、本当に今さっき悪いことを
してきたのだからしょうがない。
「ご免なさ〜い。許してください。」
「命ばかりはお助けを。」
「実は私たち銀行強盗してきたんでスー。まさかヒーローが本当にいるなんて
 思わなかったんでスー。」
 ダイちゃんに摘み上げられたこびとはもちろん、足もとのこびとたちも
泣きながら必死に命乞いをした。ダイちゃんは摘み上げたこびとをしばらく
見つめていたが、ダイちゃんは、
「いや、許さない。別に僕がブタの怪獣と間違えられたから怒っている
 わけじゃないよ。悪人を懲らしめるのはヒーローとして当然のことだろ。」 

第380話

「お願いします。 何でもしますから許してください!」
強盗たちは必死で頭を下げてお願いする。
こんな巨大なヒーローを敵にまわせば、一瞬でつぶされることが目に見えていた。
でもダイちゃんは、
「ダーメ。 ヒーローが簡単に悪者を許すわけないでしょ。」
「そ・・・そんなぁ・・・」
強盗たちは泣きそうになっていた。
「さーてと、必殺技を使ってかっこよく敵を倒さないとな。」

隠れて見ているシムが、
「なぁ。あのブタ、自分のことヒーローだとか言ってるぞ。」
「ええー、あれがヒーローなわけないよ。」
「そうだよ、あんなデブで全裸のヒーローなんているわけない。」
「それにさっき腹で家とか潰してたし。」
「やっぱりヒーローのフリした怪獣だよな。」
「うん。」
「俺たちであいつをやっつけてみない?」
「ええー! あんな巨大怪獣あいてにしたら潰されちゃうよ。」
「頭をつかうんだよ。 倒せなくても街から追い出せばいいんだよ。
 成功したら俺たちがヒーローになれる!」
「大丈夫かな・・・」 


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